こんにゃくの探求

 

令和6年度、まんとみ幼稚園はとうきょうすくわくプログラムで「こんにゃく」をテーマとした探究活動に取り組みました。

 まんとみ幼稚園の近所には、こんにゃくを作っているこんにゃく屋さんがあり、時々こんにゃくの切落しを譲っていただき、保育者と子どもたちとで調理し、美味しく食べてきました。そんな身近な存在の「こんにゃく」に、改めて出逢い直してみようと、このテーマにしました。テーマ選びの過程では、食べ物をテーマにすることへの葛藤もありました。食べ物であるこんにゃくで遊ぶことになるのではないかという意見なども出て、よく話し合い、使った後にはよく洗って煮沸して職員が食べることにして、活動が始まりました。

子ども達にとっての「こんにゃく」とは… どんな世界が開かれていくのか、保育者も一緒に探究のプロセスをたどっていきました。4歳児が小グループ(4人)になって、「面白そう!やってみたい!」を大切に、約1時間の探究活動をしました。4人グループに、保育者1人、セデップ(CEDEP東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター)のアトリエリスタひぐちけえこ先生、記録担当の先生1〜2人、園長が参加し、保育時間後には、参加者を中心に他の保育者も加わって、振り返りと次回の予定について話し合いました。

1st  round  「こんにゃくってなんだろう?」

 「こんにゃく」を食べ物としてではなく、不思議な物体として出逢ってみよう!

箱の中にこんにゃくや色々な感触の物体を入れて、箱に手を入れただけで何があるかを当てたり、身体中を使って「こんにゃく」と触れたりします。「冷たい」「重たい」「つるつる滑る」「黒い粒々がほくろみたい」「見なくてもにおいでわかる」「頭に3個まではのせられる」「水に浮くのかな?」「こんにゃくは、おいしいためにあるんだよ」など、それぞれの感じたことが言葉になりました。さらに、水槽の中のこんにゃくを入れて、水に浮くのか試したり、こんにゃくの黒い粒が何なのかマイクロスコープで拡大したり、ちぎったこんにゃくを揉んで音を聞いたり、様々な方法でこんにゃくを探究しました。

2nd  round  「動くこんにゃく」

 こんにゃくを様々な大きさ・厚さ・形に切り、子ども達が名前をつけました。まないた君、ふとふとふうとう、ちょんまげ君、たこさん、ぺらぺらさん。それから手作りスライダーで滑らせ、観察します。「しかくいのはコロコロおちた」「さんかくのは隕石みたいにおちた」「たこさんは横になる」「おっきくて長いやつは動かなかった。めっちゃ滑るのが弱すぎた」「小さいのは速くいく。大きいのはゆっくり」など、それぞれにこんにゃくの動きを捉えて言葉にしていました。

 こんにゃくスライダーの様子を絵で描くため、白画用紙や黒画用紙、色々な素材を自分で選びました。選ぶところから子ども達の表現は始まります。一人一人がこんにゃくの動きを自分の視点で捉えていることが絵に表れます。滑った軌跡を線で描いたり、矢印で動きを表したり、線の間隔の大小で速度を表したり。「こっちは速い、こっちはゆっくり」「こんにゃくが、あーたのしい!って言ってた」と、描きながらこんにゃくの世界を一緒に感じていたようです。そこで、自分の描いた絵を見ながら自分の身体でこんにゃくの動きを再現し、皆の前で順に披露しあいました。

3rd  round  「ぼくのわたしのこんにゃく」

今まで体験してきたことをもとに、実物は見ないで、心の中のこんにゃくのイメージを描いてみます。今回は馬の毛の筆や、タヌキの毛の筆などと墨を使います。こんにゃくのように揺れ、力の強弱によって太さが変わる素材です。一人ひとりが長いロール紙の上を歩いてみたあと、こんにゃくの軌跡を描いていきました。

一本の筆に墨汁を含ませて、4人が順番に受け渡して繋いでいくと、描いている子の筆の動き=こんにゃくの動きに、他の子ども達もついていきました。ひとつとして同じ軌跡はありません。次に、和紙やクラフト紙などの中から自分の好きな紙を選んで描いたこんにゃくをお互いに発表しました。「行ったり来たりしているこんにゃく」「お家からこんにゃくの匂いが流れてる」「夜のすきまで生きてるこんにゃく。明るいとカサカサになる。こんにゃくには暗い方がいい」…と、それぞれに自分のこんにゃくについて語りました。

「こんにゃく映画祭」 

小グループでの活動を終えた1月、「こんにゃく映画祭」に4歳児が全員集合し、それぞれの作品をプロジェクターで映し出して発表しあいました。その後、園庭に出てこんにゃくの唐揚げを食べているところに長いロール紙の「こんにゃくの軌跡」が2階から降りてきて、子ども達の歓声が響きました。

プロジェクトを終えて

 子ども達にとって「料理して、食べて、美味しい」というイメージだった「こんにゃく」。五感を使って遊んで、観察して、身体ごと「こんにゃく」を探究して、一人一人のこんにゃくの世界がどんどん広がっていきました。それを楽しんで表現していく姿に、プロセスやゴールを大人が先導しないことも、活動の環境や導入の多様さも大切だと学びました。

 活動後に振り返りをしながら、子どもの新たな面を発見し、保育者間で様々な気づきを共有し、次の活動のテーマへと繋がりました。

2023年度に行った取り組みはこちらです