まんとみだより

まんとみだより No.14

子どもたちは、園生活の中でさまざまな環境や自然物に触れて感じとったものを、大人が思いもよらないその人らしい方法で表出します。体全体で、表情で、言葉で、そして色々なものを使って遊びながら、そのイメージを形にします。子どもたちが次々に創造する心の世界に、いつも引きこまれるのですが、その中で忘れられない絵・粘土・木工の表現をご紹介したいと思います。

①はキミドリさんが描いた絵ですが、みんな向こうを向いて何かを読んでいるようです。この頃(5歳から6歳にかけて)は、見たものを見たようにリアルに表現したくなる時期ではあるのですが、人を後ろ姿で描くということ=顔を描かないで黒く塗ることはとても大胆で、勇気が必要です。それでも、思ったことを素直に画面に描けることの凄さを感じます。


②③は泥粘土の作品です。キイロさんが、平らに伸ばした粘土にスプーンの柄の先で引っ掻いているうちに、目や鼻や口が現れて、人の顔に見えてきました(②)。さらに引っ掻き続けていって(③)、なんだかトイレの和式便器に見えてきたのでしょうか。「世界が行列するトイレ!」と叫んで、とても嬉しそうに作っていました。何という自由な発想でしょう!そしてタイトルも素晴らしい!!

 

 

泥粘土遊びが大好きなオレンジさんが、ピノッキオを作りました(④)。丸いお団子を2つ作って重ね、鼻と目、手もつけ、帽子もかぶっています。何とも温かみのある、そしてどっしりとした力強さのあるピノッキオ。その子に重なるようにも思えます。飾らない表現の中にとっても温かいものを感じる作品になっています。

 

⑤は木工制作の作品です。木工コーナーでは木や木の実などを材料に、金槌や鋸などの道具を使って、思い思いに遊んでいます。毎日色々な思いやイメージを持った作品が子どもたちの手によって生まれています。これはロボットをイメージして作られたものでしょうか。園庭のマテバシイの木の実を胸飾りにして、目はワインのコルクを釘で打ちつけて、手や足や耳なども釘で表現しています。そこへクレヨンで目や口、服やボタンなど色を塗って仕上げていますが、それが何とも暖かい表現となり、その子らしさが感じられます。
 子どもたちは日常の遊びを通して、さまざまなことを感じ、それをおもてにあらわしています。どの作品もその瞬間、瞬間の子どもたちの心の動きを表しているともいえるでしょう。そして、幼児期に思いおもいの自由な表出をすることで、これからの表現の大元となる根っこの部分が育つのだと思います。

 

 

2024年04月10日

まんとみだより No.13

さくらの花が咲きました

3月4日に植えられた桜の木に花が咲きました!
植樹の時は「こんなに細かったら、まだ花は咲かないんじゃない…?」と子どもたちと話していましたが、卒園式の頃には点々と小さなつぼみがつき、先週ついに白い花が咲きました。


 

開園当初からある桜も、かなり老木になりましたが、まだ花を付けてくれています。


春はもうすぐそこですね!

 

2024年04月01日

まんとみだより No.12

園庭にさくらの木がやって来た!

3月4日、トラックが園庭へと入ってきました。第55回卒園記念に桜の木ジンダイアケボノ(神代曙)が寄贈され、公園側のフェンス沿いに植えられることになったのです。植木屋さんが植えるところを子どもたちも見られるチャンスなので、白線の外側を観客エリアにしました。

 

集まってきた子ども達は植木屋さんの作業行程を興味津々で見守っていました。
 植樹が終わると、キミドリさんが「世話はどうしたらいいですか?」と質問にいきました。「木はお水をやり過ぎても根が傷んでしまうので、土の表面が乾いたら水をあげてください」などなど丁寧に教えて頂き、真剣に頷いていたキミドリさんです。




この木はソメイヨシノ系の品種で病気に強く、やや濃いピンクの花が咲くそうなので、開花が楽しみです。
目の前で大きな木が植えられるのをみていた子ども達。何かに動かされるように、キイロさんが園庭の土を盛り、そこに東浪見の水仙をさして、小枝で水仙の支えを作っていました。

 

それを見ていたオレンジさんが、同じようにミニ植樹をしていました。

 

園庭の新しいジンダイアケボノも、ソメイヨシノの老木もさくらんぼの木も、子どもたちの遊ぶ姿を嬉しそうに見守ってくれているようでした。

 

 

2024年03月15日

まんとみだより No.11

いらっしゃい!いらっしゃい! −お店は大繁盛−

2月8日は良いお天気になり、キミドリさん達が、園庭にかまどを用意して、お釜でご飯を炊きました。お米を計って、研いで、お釜に入れて水も入れて浸します。かまどにお釜をのせて、燃やしやすい紙に火をつけ、火が消えないように紙や小枝をくべながら、太い薪を入れて強火にします。しばらくするとお米が炊けるいい匂いが園庭中に広がりました。火を落として余熱で蒸らしていると、アオさん、オレンジさん、キイロさんたちは何ができるのだろうと興味津々で集まってきました。

 

そこにテーブルを運びながら、エプロン、三角巾、マスクを身につけたキミドリさんたちが登場。炊き立てでフワッフワの、いい匂いのするご飯を、おにぎり器の中に入れて左右に振っていくと、あっという間に俵型のおにぎりの完成です。「いらっしゃい!いらっしゃい!おいしいおにぎりですよー」「おにぎりを食べたい人はよく手を洗ってから並んでくださーい!」「いらっしゃい!いらっしゃい!」の声で、一目散に水道へ走る子ども達。みんなよーく手を洗って行列に並びました。「おにぎりをもらった人は座って食べてくださーい!」 みんなは言われた通りに、テラスなどに座っておにぎりを頬張りました。「おいしーい!」「おかわりは有りですかー?」と口々にリクエスト。おにぎり屋さんは大繁盛!おかわりをした人もたくさんいました。

 

 後日、キミドリさんのお店に憧れたキイロさんたちも、園庭で栽培しているカリフラワーやブロッコリーを茹でてお店を開きました。採れたて、茹でたてのカリフラワー、ブロッコリーは野菜本来の旨味が感じられて甘い味がしました。亀戸大根を薄切りにして塩を振って亀戸大根のお店も出しました。亀戸大根は地域の伝統野菜で、キイロさんがお家からもってきた種を蒔いて育てた大根です。辛みの強い大根とのことでしたが、新鮮でみずみずしい味わいで子ども達にも人気でした。 食べるものは買うのが当たり前ですが、まんとみでは子ども達と一緒に園庭や東浪見の畠で種から野菜を育てて、収穫して、調理して・・・そのプロセスも丸ごと美味しく味わっています。

 

カリフラワー



ブロッコリー

 

亀戸大根

2024年02月22日

まんとみだより No.10

「かっこいいね!」 (浅香山部屋の朝げいこ見学)

2月7日、キミドリ(年長)さんたちは、本もののお相撲さんを見られるということでドキドキワクワクしながら浅香山部屋を訪ねました。
稽古場に入る前に先生から、お相撲さん達が強くなるために毎朝頑張っていることや邪魔しないように静かに見るように言われて、ピリッとした緊張感が子ども達にも伝わってきました。皆無言で靴をそろえて稽古場に入り、見学者用の座布団に座っていよいよ見学です。既に始まっていたぶつかり稽古のぶつかりあう音や掛け声に圧倒され、思わず「かっこいい!」とつぶやく声も。土俵の外でてっぽうをする姿、四股を踏む姿などにも間近で見入っていました。この日はブラジルの小学生が稽古に参加してすり足を体験する様子も見られました。帰り際、浅香山部屋のおかみさんから「また来てくださいね、入門待っていますよ」と声をかけていただきました。短時間ではありましたが本物の相撲の世界を全身で味わった高揚感をもって、幼稚園までの道のりも元気に歩けました。
園に着くなり早速土俵作りが始まり、周りにはゴザの桟敷席ができ、相撲の始まりです。行事役が軍配を持って「にーしー〇〇くん」「ひがーし〇〇くん」「手をついてー、ハッケヨイのこった、のこった」、応援団からは「〇〇がんばれー!」「〇〇まけるなー!」と応援合戦、「〇〇くんの勝ちー!」。勝負の後は向かい合ってお辞儀をします。何組も何組も途切れることなく取り組みは続きました。キミドリさんの相撲を見ていたキイロ(年中)さんやオレンジ(年少)さんも参加していきました。

みんなで土俵作り


その日のうちに、皆でお相撲を見たことを思い出しながら絵を描きました。お相撲さんの厳しい顔の表情や、てっぽうをする姿、稽古場の情景など、それぞれの心に響いたことがイキイキと表現されていました。


お相撲さんの勇姿


てっぽうをするお相撲さん


上はタオル、座布団で見学、ぶつかり稽古

2024年02月13日

まんとみだより No.9

豊かな自然に抱かれて(東浪見の家)~冬も楽しい!

1月17日、キミドリ(年長)さんが貸切バスに乗り込み「東浪見の家」に出かけました。1時間半後に到着すると、グループごとに作業に向かいます。何度も経験しているので、どんな道具が必要か、その道具はどこにあるのか、自分達でどんどん動いていく姿は見事です。各グループが広い農園内のそれぞれの場所に散っていき、野菜畑では白菜、ブロッコリー、カリフラワーの出来具合を見ながら収穫し、果樹畑では甘夏、レモン、デコポンの木を囲んで実を採っていき、あっと言う間に収穫かごがいっぱいになりました。仕事を終えた腹ペコの子どもたちと白菜スープを作って、お弁当と一緒にいただきました。


食後は坂滑りや探検、ままごと、鬼ごっこ、水仙の花摘みなど、広々とした自然の中で思う存分遊びます。
収穫したものはバスに積み込み、幼稚園の年中・年少さん達やお留守番の人達に持ち帰りました。

 

翌日は、園庭にカマドを出して、キミドリさんたちが白菜スープをつくってお店を開き、長い行列ができました。鶏がらスープと白菜・・・採れたてならではの白菜の甘みが美味しいスープ!寒い冬だからこその楽しみを皆で味わいました。

 


レイチェル・カーソンは、「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要でない」として、「子どもたちが出会う事実のひとつひとつが、やがて知識や知性を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒や豊かな感受性はこの種子をはぐくむ肥沃な土壌です。」※と言い、幼い子ども時代は、この土壌を耕すときだと述べました。
まんとみの子どもたちは、まさに東浪見の自然の恵みを、余す事なく、全身体を使って感じ、自らの土壌を耕していると言えるでしょう。

※レイチェルカーソン著 上遠恵子訳『センス・オブ・ワンダー』新潮社p24


2024年01月24日

まんとみだより No.8

トントン・ギコギコ (木工コーナー)

 

幼稚園の一角に木工コーナーがあります。もう何十年も子どもたちによって使い込まれた道具たちがそこには置かれています。一人ひとりの子どもの手の大きさや、手の力に合わせて槌の重さや大きさが違う金槌、幼児の手に合わせた釘抜き、何種類かの釘、子ども用のノコギリや、木を切るときに使う万力、使い込まれた分厚いテーブル、イスなどが用意されています。
本園では、釘打ちは3歳児から5歳児まで使うことができます。


最近も年少のオレンジさんがやってきて、10センチくらいの板の上にワインのコルクの輪切りを置いて一所懸命釘を打っています(こうすると柔らかいコルクが釘を打ちやすくしてくれます)。なかなかまっすぐには打てず、何度も何度も繰り返し挑戦して、段々に真っ直ぐ打てるようになり、そこからカメラを作ったりしてイメージを膨らませて遊んでいます。3歳児が釘打ちをするのは危ないのではないかと思われることもありますが、子どもは、自分にできそうもないことには慎重で、友達のやることをよく観察して、できそうだと思うと挑戦します。そして、粘り強く、諦めずに頑張り、うまく打てるようになった時に達成感が得られ、そしてそれが自信につながっていきます。
今はロボット作りが流行っています。釘を打ったり、ボンドで貼り付けたり、クレヨンで色を塗ったり思い思いのイメージで作っています。

 


2023年10月31日

まんとみだより No.7

毎日、かに出会っている。

園庭の真ん中で、何があったのか「わたしはかなしいー!」と訴えるように、年少のA子ちゃんが大きな声で泣きだしました。泣いていることに気づいても、まんとみの大人はすぐに駆けつけず、危険がなければ少し様子を見守ります。すると、A子ちゃんが泣いているのに気づいた友達が来て、顔を覗き込みました。左の手をA子ちゃんの頭に優しく添えて、何やら声をかけていました。年少さんなりに慰めたり訳を聞いたりしていたのでしょう。A子ちゃんが泣き止んで、2人は手を繋いで、他の友達が遊んでいる所に向かい、元気に遊び始めました。大人達が原因を聞きだすことも解決を手助けすることもなかったのですが、A子ちゃんは思い切り自分の感情を表出して、誰かがそれを受けとってくれて、立ち上がることができたのだと思います。
 時は6月中旬、年少さんはまだ入園から2ヶ月少しの時のことです。3歳児というと、もっと幼いイメージでしたが、自分の心のままを大きな声で表現ができるA子ちゃんにも、友達のことに気づいて心動かし力になろうとしたB子ちゃんにも、驚きました。

 

 

厳しい気候の夏休みを過ごした子ども達と大人達が、まんとみ生活を共に再開します。
毎日、様々な事や人や物や自分に出会い、喜・怒・哀・楽…すべてを自分の栄養にしながら成長していきたいと思います。

 

2023年09月05日

まんとみだより No.6

一学期、思い出されるシーン

お弁当を食べ終わるとお腹も気持ちも満たされて、年長さん達はリレーに集まっていき、年中少さん達は、鬼ごっこやダンスや虫捕りなど、自分の遊びに向かっていく。園庭に泥粘土コーナーを出すと年少さんもやってくる。この泥粘土は、まんとみ幼稚園の東浪見の敷地から掘り出した粘土質の土で、皆は『東浪見粘土』とよんでいる。石のように固い粘土を細かく削って、水で捏ねると、泥粘土になる。泥粘土の面白さは、水を多くするとのり状になり、水を少なくすれば粘土として様々な形に変化することだ。


 その粘土で遊んでいた時のこと、私の手や腕についた泥粘土が乾いて白くなっていることに年少さんのA君が興味をもったようだ。「ぼくも同じように白くしたい」といって、手と腕にのり状にした粘土をぬりたくり、やがて乾いて白い手ができあがった。するとA君は嬉しそうに、「ぼくたち仲間だね」「仲間の印だね」といって二人のお揃いの手を交互に見ていた。多くの子は手や腕に粘土がつくことにまだ抵抗を感じている時期に、3歳のA君の中に勇者的感覚を見たような瞬間だった。


2023年08月04日

まんとみだより No.5

東浪見の畑でジャガイモ掘り~そこから広がる嬉しい時間

 5月、6月に年長さん達が東浪見の畑でジャガイモを掘った。前の年長さんが2月に植えてくれたジャガイモが豊作!掘りたてで作ったフライドポテトに皆が歓声をあげ、笑顔で頬張った。

 

 



翌日、幼稚園に持ち帰ったジャガイモを見て「山盛りポテトを作ろう!」という年長メンバーが料理を始めた。ジャガイモをきれいに洗って、細長く切って水にさらす。水気をふいて油の中へ。「あれ?音が変わったよ」と言う声にフライパンを覗き込むと、初めはプチプチという静かな音がジュワジュワ~に変わっていた。

 

年中さんも年少さんも年長さんも、ひと遊びした後『水飲み休憩』で部屋に戻って水筒を飲む。梅干しや梅のシロップ漬けがお皿に並ぶが、この日は山盛りポテト屋さんが出ていて大喜び! 翌日からもポテト屋さんを楽しみに急いで戻ってくるようになった。そのうち、お客さんだった年長さんがお料理メンバーに仲間入りしたり、大根やピーマン、ミニトマトなどを園庭で育てているメンバーがお店屋さんを開店したりと、お楽しみが広がっていく。

 



幼稚園のプランターでジャガイモを育てていた年中さん達も、葉っぱが枯れるのを待ちかねて収穫した。掘り終えたジャガイモを並べながら、小さいのを「赤ちゃんジャガイモ!」「見て!ハートのジャガイモ!」と言いあって嬉しそうだった。年中さん達もお料理したいと意気込んでいる。


2023年07月18日

まんとみだより No.4

遊ぶことは学ぶこと

興味を持ったことに熱中して遊べることは、幼児期の子どもたちにとって大変重要なことです。乳児~幼児は遊ぶことを通して、様々なことを感じとり、自分の力を使い、新たなことを知ったり吸収したりしていくからです。それは乳幼児期の健全な発達を促すと共に、学びの体験となります。自ら遊ぶことが学ぶことになるためには、十分に遊べる環境や時間、人との関わりが大切になります。ある遊びの研究によれば、いわゆる難関校に合格した学生は幼児期にいっぱい遊んでいたということがわかったというのです。遊びは主体的な活動です。遊ばされるのではなく子どもが自分の意思で遊ぶのです。そして、集中して遊ぶことによって色々なことを考え、気づいていく力をつけていきます。そのプロセスに手応えや満足感を感じることで、さらに面白くするために遊びを展開しようとするのです。

泥団子で考えてみましょう。初めは作りたいと思うと、他の人がどのようにつくっているのかをよく見て観察します。それから自分でもやってみます。真似をすることは学ぶことなのです(学ぶは真似ぶから派生していると言われています)。しかし、初めからはうまくいきません。どうしたらツルツルピカピカの団子ができるのか考え、細かい土のありかを突き止め、水を加えて・・失敗をしながらも繰り返し粘り強く挑戦し、非認知能力が養われます。そして、できた時には「やったー」という達成感が得られるのです。自分でやりたいと思い、挑戦し、試行錯誤しながら、どうしたらうまくいくのかを探っていくというこのことは、学習の仕方を学習しているといえるでしょう。この経験が、やがて小学校から始まるさまざまな学びに生きていき、やがて生きる力になっていきます。用意されたプログラムに従って、(〇〇遊びと言って)遊ばされるのでなく、自ら遊ぶ事が重要なのです。まんとみ幼稚園で、お気に入りの場所をみつけて、大いに遊んでもらいたいと思います。

 

 


2023年06月29日

まんとみだより No.3

仲良しペア ~異年齢の関わりの中で育まれるもの

園生活に慣れてきた年少さんもお弁当を食べる生活になった。仲良しペアの年長さんが、お弁当の準備から食べ終わって片づけるまでを一緒に過ごしている。自分の年少時代を思い出しながら、言うことを聞いてくれない年少さんに、「でもさ、手を洗わないと食べられないんだよ~」「一緒に持ってあげるから行こうよ」等と、あの手この手で導いている。大人なら上手に、早く年少さんを促すことができるだろうが、年長さんが『年少さんにどうしたら伝わるかな』と考えながら、一生懸命に関わっている深い時間には、かなわない。かつて年長さんも、そうやってもらいながら、安心感や愛着や憧れを感じていたのだろう。年長さんの役割だからというより、自ら年少さんにやってあげたくなる気持ちが年長さんを動かしている。

 

早く食べ終わった年長さんが自分の片づけを済ませてしまい、「明日のお弁当は、パンだけにしてもらおうかな~」と言いながら、仲良しペアの年少さんの隣に笑顔で座っている。午後は年長リレーがあるので、「 Iちゃんが食べ終わるまで待ってくれてるの?先にリレーのハチマキ巻いて、戻ってきても大丈夫よ」と伝えたが、その場を動くことはなかった。せかすことなく、ただ隣にいてくれる姿から、Iちゃんを想う気持ちが伝わってきた。年長さんがお休みの時に、同じファミリー(異年齢グループ)の年中さんにお世話をお願いした。年中さんと一緒にお弁当を食べていた年少さんが、ブロッコリーを残したまま席を立ってしまった。大人が迎えにいって戻ると、年中さんが「Mちゃん、まだブロッコリー残ってるよ~」と、フォークで刺したブロッコリーを渡してくれた。日々、年長さんと年少さんの関わりを身近に見ながら、年中さんの中にも年少さんを可愛いと思う気持ちや役に立ちたい気持ちが芽生えているようだ。

 

勿論、微笑ましい光景ばかりではなく、年少さんが逃げ出したり、何もしなかったり、泣いていたり…そんな状況もたくさんあって、困り果てた年長さんが泣いてしまうこともある。でも、大丈夫。時間をかけて分かり合えるペアになっていくのだし、どうしたらいいか分からなかったり、上手くいかない経験もあって、人が人の中で育つ土台になる。相手が思っていることを想像したり、どうしたら解決できるか色々と試してみたり、そうこうしているうちに、『一方的なお世話』が、『解決に向かって一緒に力を合わせる相互的な関わり』へと変化していき、その共有感はお互いへの信頼になっていくのだと感じる。お弁当を嫌がってぐずる年少さんの顔をのぞきこみ、「だってママと食べたいよね…」と言って、傍らで待っていてくれる年長さん。2年前に自分だってそうだったから・・という本当の寄り添いから生まれてくる懐の深さだと、毎年思わされる。

2023年06月14日

まんとみだより No.2

どろんこ

まんとみは、泥んこ保育や裸足保育を推奨しているわけではない。こどもが遊びに向かう気持ちを優先して動き出すと、そうなってしまう子が多いだけのことだ。園庭はどこを掘ってもいい。1年の中で、日向や日陰になる場所・時間はいろいろだから、遊びやすい場所はいくらでも変わるし、自分の落ち着く場所もみんな違う。土を掘って水を足して、そこからはいくらでもどんな風にでもなっていく。ままごと、水路、水たまりへジャンプ。泥団子の投げ合い。ツルツルの固い団子作り。名前はないけれどなんとも楽しそうな遊びだってある。土+水のセットは、子どもの想像力や五感を刺激し、全身の五官を駆使しながら発達する幼児にとっては、ごく自然に展開する遊びだ。それでも、汚れを気にしながら遊んでいるうちは、「それなりの遊び」で終わってしまう事が多いのだと思う。『汚れる事は勇気のいること』という子どもも増えている。「え~汚いから・・どうしよう」という気持ちを振り切って汚れる世界に入ってみると、何でもない普通のことだったりする。「洗ったらキレイになるもん(洋服はならないけど)」と開き直って、泥水の中にジャンプする子どもの満足気な表情は、それぞれの大きさの勇気で踏み出したからこそのもの。すてきです。

(大勝)






2023年05月29日

まんとみだより No.1

子どもって・・・

理事長 浅田裕子

 東京の下町、亀戸に開園してから50年余り。園庭を裸足で駆け回り、水たまりで泥遊びに熱中していた子ども達の姿は、今も変わりません。周囲から、普通の幼稚園ではないと言われることが多いまんとみ幼稚園ですが、子どもが生き生きと遊び、はたらき、色々な人と出会って、自分を育てていく生活を大事にしています。
 少子化が日本の重大事となり、子どもという存在が厄介なもののように扱われたり、子育てが苦難ばかりのように語られたりする中、もっと子どもの世界の面白さや豊かさ、素晴らしさも知って頂きたいという思いが強くなりました。子どもと関わることは時間もエネルギーも使わなければなりませんが、大人達も共に成長していける貴重な時間でもあります。まんとみだよりで、まんとみの子ども達の繰り広げる世界をお伝えしたり、大人達の思索を読んで頂いたりして、子ども達の魅力に触れていただけたら幸いです。

 

まんとみだよりについて

園長 浅見 均

 まんとみだよりは、まんとみ幼稚園の保護者の方、卒園生とその保護者の方、まんとみの保育に関心のあるすべての方を対象に、まんとみ幼稚園にまつわる様々なことを掲載するものです。
 いま幼稚園で生活する子どもたちの生き生きとした生活の様子や、まんとみの保育の考え方などについて様々な観点より書いていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

2023年05月10日